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祖国とふるさと

ずいぶん時間が経ってしまって、日記が前後してしまうが、
これを書かずにはいられない。

Mayさんのお芝居『ボクサー』。

実際は態変を観に行った次の日の観劇だった。
二日連続で在日韓国朝鮮人のルーツをめぐる物語。


祖国とふるさとが違うのだ、
ということをはじめて知って考えた。

北と呼ばれる「祖国」と
南と呼ばれる済州島「ふるさと」。
そして生まれ育った日本。

戦後を駆け抜けたひとりの主人公の眼からみた、壮大な物語。
親子三代にわたる物語を、一人の役者が親を演じその子を演じ、
受け継がれていく血と、世代によって少しずつ違ってくる感じ方、
また、時代によっても変化し、より複雑化していく想いを見事に描く。

主宰で作演出の金哲義さんが、
おそらく実体験に基づいて想いを綴っていて、
そして本人ががっつり、彼にしかできない役を演じているので、
偏見を恐れずに言うと、厭味なくまっすぐ直球で受け止められる。

いっぱい泣いて、いっぱい笑かしてもらった。

金さんの書く本はどんどん集約されて来ていて、
これまでの作品にも出てきたようなシーンが、
さらにまっすぐ、痛いけれど伝わりやすくなっていく。

前回の男芝居、朝鮮学校が主な舞台だった『チャンソ』は
大好きな名作で、
わからない言葉も新鮮で、びっくり強い高校生や先生も新鮮で、
象徴的なシーンの視覚的なかっこよさが強く印象に残っているが、

今回は肉感的な激しさ、荒々しさよりも、
映画のような物語性、一歩下がった統一感、
脈々と流れる大きなものがより感じられた。

激しさは心の中で静かに深く複雑。
それは、子どもが
かつての親の気持ちを考えるからなのではないだろうか。

それはどんな気持ちだったのだろうと、
まるで無知な日本人の私でも想像し、
そんな親の心を推察する子の立場でも同様に共感しようとし、
だから本当に、心がいろんな方向に引っ張られるのだ。

親と子とその子とは、世代が違って微妙に立つ場所が違って、
そこからいさかいが生まれたりもするのだけど、
お互いに家族が本当に好きで、大切で、仲良くしたいし、
ずっと一緒に過ごしたいと思っている。
なのになぜたったそれだけのことが叶わないのか。


少年時代に戦中戦後を必死で生きた主人公。
ずっと憧れ背中を追いかけていた兄は、
大人になってひとり祖国へと旅立つ。

もうすぐ家族にも祖国へ渡る許可が下りる。
そしたら家族全員で祖国へ帰ろう。
希望にあふれた楽園。
そしてすぐに南北は統一され、ふるさとにも戻れるだろう。
船出を前にご近所や親戚でどんちゃん騒ぎ。
そんな時代が実際にあったのだ。

日本語の発音が上手でない父母。
日本人と付き合うことを許されず家を出てしまう娘。
「きょうだい仲良く」と口癖のように言った年老いた母。
日本に来た時にここで生きると決めて、
オモニ、アボジとは呼ばせなかった家族。
現代も、韓国籍を取ったら旅行もしやすくいろいろ便利ということも
よく知らなかった。

兄からの家族への手紙には祖国の本当の生活は書かれず、
幸せに過ごしているとだけ届く。

強かった兄は先に死に、
その子の若すぎる死の知らせが届くのも数ヶ月経ってから。

祖国はいちばん遠い国になってしまったと言う。

時代と、国籍と、血と、貧乏と、いろんなものに翻弄されながら
誇り高く生きる。

在日朝鮮人の友だちは観終わって、本当すぎて重いと言っていた。
だけど見逃した人がいれば本当に惜しいことをしたと思う。
内容ばかり触れたけれど、役者がみんなすばらしかった。
名前を挙げきれないほど。

金さん演じる主人公の、年老いた背中がわすれられない。
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辻野加奈恵 出演情報

●マキコミシアター第5弾
『イキナリ防衛軍』

【日時】
2017年4月
14日(金)19:00〜
15日(土)13:00〜 / 16:00〜 / 19:00〜
16日(日)13:00〜 / 16:00〜 / 19:00〜
【料金】
前売(Web) 3,000円 / 当日 3,500円
(ドリンク付)
【会場】
自由表現空間 シアターカフェNyan
【チケット】
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【詳細】
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辻野加奈恵です。
大阪でお芝居をしています。
【→more】2012.10 更新